沖縄の水道事業とダムの果たした役割

はじめに

沖縄県企業局の水源は、ダム・河川水・地下水・海水淡水化水の4種類からなっており、これらの水源は、沖縄本島の北部と中部にあります。

 また、水源の大部分を占める北部の河川水とダム水は、人口の90パーセント以上が集中する中南部の消費地へ送っているのが特徴です。ここから、その水源の一部を紹介します。

水源の紹介

東系列の北部5ダム

福地ダム

 本土復帰以降、9つの多目的ダムが建設され、その多くが北部に位置しています。中でも、貯水容量の最も大きい福地ダムは、昭和45年に建設が始まりました。当初は、米国民政府により設計・施工が行われていましたが、復帰を機に日本政府に継承され、昭和49年にダムが完成しました。福地ダムは、総貯水容量が5,500万立方メートルで、利水容量が4,470万立方メートルとなっています。そのうち企業局の利水容量は、水道用水と工業用水を併せて4,270万立方メートルです。

 また、福地ダムと併行して建設が進められた新川ダム、安波ダム、普久川ダム、辺野喜ダムが次々と完成し、これらのダムを連結する調整水路が建設されました。これらの水源などの施設は、現在もなお沖縄県の発展と文化的な生活を維持するための貴重な財産となっています。

西系列水源開発事業

大保ダム

 昭和50年代半ばは、北部5ダムの水源開発と東系列の導水施設などの関連施設の整備に目途がついたころでした。しかし、一方で人口増加や生活水準の向上、経済活動の発展等に伴い水需要は増加し続けていました。
 そこで、沖縄本島北西部の12の小河川から豊水時の余剰水を取水し、大保ダム並びに再開発した倉敷ダムに貯留して、水の安定確保を図る事業が昭和55年に始まりました。これが西系列水源開発事業です。最終的には、平成21年度までの30年間に亘る長期の事業となり、12取水ポンプ場と132キロメートルにもおよぶ幹線導水路などの施設が完成しました。これらの施設の整備により、東系列と併せて水道用水の安定的な供給体制が拡充されました。

海水淡水化施設

海水から真水を造る逆浸透設備

 復帰後、東系列及び西系列の水源開発を進めてきましたが、それらの水源開発を上回るスピードで水需要が伸び、頻繁に渇水が生じていました。そこで考えられたのが、無尽蔵にある海水を淡水化することでした。
 海水の淡水化は、特殊な膜を通し造水する技術です。その技術を可能にする設備は、コンパクトに整備することができ、施設面積が小さくて済むことや工期が短くて済むという利点があります。
 水源に悩まされていた状況において、格好の水源開発事業となった海水淡水化施設の建設は、平成5年に工事を着工し、僅か4年で完成しました。
 そして、この施設の完成により、一日当たり4万立方メートルの水道水を造り出すことが可能となりました。

おわりに

 これまでの3次に亘る沖縄振興開発計画及び沖縄振興計画により、多目的ダムの建設や河川から取水する施設の建設などが進められてきました。金武ダム(億首ダム)を含めますと、10の多目的ダムが建設され、20の河川から取水可能な施設が完成しています。

 本土復帰時点の水源別の一日平均取水量は、河川水が約55パーセントで、ダム水が約15パーセントでした。現在は、河川水が約11パーセント、ダム 水が81パーセントを占めています。降雨の無い日が続くとたちまち取水量が少なくなる河川水から、降雨の影響を受けにくいダム水への依存度が高くなったこ とで、以前に比べて安定的な取水が可能となりました。そのおかげで、平成6年3月から現在までの20年に亘り、断水することなく連続給水を継続できていま す。

 昭和47年度の一日当たりの水源水量は約23万立方メートルでしたが、平成24年度の実績では約43万立方メートルとなっています。さらに、水源水 量は平成26年4月以降から取水を予定している金武ダム(億首ダム)を含めると約62万立方メートルとなり、安定的な給水に大きく寄与しています。

 最後に、これらの水源開発はこれまで多くの先人の方々の絶え間ない努力と地域の方々の協力の賜です。これまでご尽力くださいました皆様に感謝を申し上げますとともに、天からの恵みである貴重な水を今までと同様に大切にしていただきますようお願い申し上げます。

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